更年期がつらくて仕事に影響…|働き方の工夫と伝え方のヒント

明るいオフィスのデスクで、少し手を止めてひと息ついている40代の女性のイラスト

朝、目が覚めた瞬間から体が重い。会議中に急にカーッと熱くなって汗が止まらない。いつもならすぐ思い出せる名前が出てこない——。40代・50代になってから、「前と同じように働けない」と感じることが増えていませんか。

仕事の量も責任も減っていないのに、体だけが言うことを聞かない。まわりに迷惑をかけている気がして焦る。けれど、はっきりした病名があるわけでもないので、休む理由も説明しづらい。そんなもどかしさを抱えている方は少なくありません。

更年期の不調は、目に見えないぶん、自分でも「気のせいかもしれない」と思ってしまいがちです。でも、体の中ではホルモンの大きな変化が起きていて、それが集中力や気力、体力に影響することがあるとされています。この記事では、更年期の不調が仕事に影響するときの向き合い方、働き方の小さな工夫、そして職場や家族への伝え方のヒントを、やさしく整理していきます。

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目次

なぜ更年期の不調は仕事に響きやすいのか

パソコンの前で少し手を止め、静かにひと息ついている女性のイラスト

更年期は、閉経をはさんだ前後およそ10年間を指す時期とされています。この期間に女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が大きく揺れながら減っていくことで、心と体にさまざまな変化があらわれると考えられています。時期の目安については更年期はいつからいつまで続くのかもあわせてご覧ください。

エストロゲンは、生殖機能だけでなく、自律神経や血管、骨、脳のはたらきなど、体のさまざまな場所に関わっているとされています。その分泌が不安定になると、自律神経のバランスが崩れやすくなり、体温調節・睡眠・気分の安定といった「日々を平常運転で過ごすための土台」が揺らぎやすくなると説明されています。

仕事は、この土台の上に成り立っています。決まった時間に出社し、集中して考え、人と話し、判断を下す。どれも一定の体力と気力を必要とする行為です。土台が揺れているときに同じパフォーマンスを求められれば、負担が大きくなるのは自然なことといえるでしょう。

「働き盛り」と重なる時期であること

更年期にあたる40代後半から50代は、多くの人にとって仕事の責任がもっとも重くなる時期でもあります。管理職として部下を持っていたり、大きな案件を任されていたり、後輩の育成を担っていたり。同時に、家庭では子どもの受験や進学、親の介護が重なることもあります。

つまり、体がもっとも揺らぎやすい時期と、もっとも休みにくい時期が重なってしまうのです。「今は休めない」という状況そのものが、不調を長引かせる一因になることもあると指摘されています。

症状が外から見えにくいこと

骨折やインフルエンザなら、周囲もすぐに状況を理解できます。けれど、ほてり・だるさ・気分の落ち込み・寝つきの悪さといった更年期の症状は、見た目にはほとんど分かりません。本人が「つらい」と言わなければ、まわりは気づきようがないのです。

この「見えにくさ」が、孤立感につながることがあります。厚生労働省が2022年に行った「更年期症状・障害に関する意識調査」では、症状を自覚していても医療機関を受診していない40代女性の割合が81.7%にのぼると報告されています。多くの人が、ひとりで抱えたまま日々を過ごしているのが現状といえそうです。

仕事に影響が出やすい症状と場面

どんな症状が、どんな場面でつらくなりやすいのか。人によって出方はまったく違いますが、よく挙げられるものを整理してみます。自分に当てはまるものがあれば、「これは自分だけの問題ではないのだ」と受け止めるきっかけにしてみてください。

  • ほてり・のぼせ・発汗……会議中や来客対応、電車での移動中など、席を外しにくい場面で起きると気持ちが焦りやすくなります。
  • 疲れやすさ・だるさ……朝から体が重く、午後になると何もできなくなる。休んでも回復した感じがしない、という声もよく聞かれます。更年期の疲れ・だるさとのつき合い方で、背景とセルフケアを詳しく整理しています。
  • 寝つきの悪さ・途中で目が覚める……睡眠が浅くなると、翌日の集中力や判断力に響きやすくなります。更年期に眠れないときのセルフケアもあわせてご覧ください。
  • イライラ・気分の落ち込み……些細なことで感情が揺れ、あとで自己嫌悪になる。人と接する仕事では特に消耗しやすい症状です。詳しくは更年期のイライラ・落ち込みとの向き合い方で解説しています。
  • もの忘れ・集中しにくさ……名前や単語が出てこない、同じ資料を何度も読み返してしまう。「自分の能力が落ちたのでは」と不安になりやすい症状です。
  • 頭痛・肩こり・めまい……デスクワークが長い日や、天気が崩れる日に重なることがあります。

これらは「気合いが足りない」から起きているものではありません。体の変化にともなって起こりうる反応として理解されているものです。まずはそこを、自分自身に対して認めてあげることが出発点になります。

「怠けている」ではない|自分を責めないための考え方

更年期の不調で仕事がつらくなったとき、多くの人がまず自分を責めてしまいます。「みんな同じように頑張っているのに」「若い頃はもっとできたのに」——。けれど、条件が変わっているのに同じ結果を求めるのは、少し無理のある比べ方かもしれません。

登山にたとえるなら、同じ山を同じ速さで登ろうとしているけれど、今日は向かい風が吹いている、というような状況です。風が吹いていることに気づかないまま「なぜ進めないのだろう」と自分を責めると、体力だけがどんどん削られていきます。

大切なのは、風が吹いていることに気づくこと。そして、風の強さに合わせてペースを変えてよいのだと自分に許可を出すことです。これは甘えではなく、長く働き続けるための現実的な調整だと考えられます。

また、更年期の症状の出方には大きな個人差があります。ほとんど気にならないまま過ぎる人もいれば、日常生活に支障が出るほどつらい人もいます。「あの人は平気そうなのに」という比較は、あまり意味を持ちません。あなたの体で起きていることは、あなたの体の事情なのです。

働き方の工夫|今日からできる小さな調整

デスクで小さな扇風機のそばに座り、カーディガンをはおってひと息ついている女性のイラスト

大きく働き方を変えるのは簡単ではありません。ここでは、明日から試せる小さな工夫を挙げてみます。全部やろうとせず、いまの自分に合いそうなものをひとつ選ぶくらいの気持ちで読んでみてください。

体温調節がしやすい環境をつくる

ほてりや発汗が気になる方は、脱ぎ着しやすい服装を基本にすると気持ちが少し楽になります。カーディガンやストールなど、さっと1枚外せるものがあると、急な暑さにも対応しやすくなります。デスクに小さな扇風機を置いたり、冷たい飲み物を手元に用意しておくのもひとつです。

汗をかいたあとの冷えが気になる場合は、替えのインナーや汗ふきシートをロッカーに入れておくと安心感につながります。「もし起きても対処できる」という備えがあること自体が、不安をやわらげてくれることがあります。

集中できる時間帯に、重い仕事を寄せる

更年期の不調は、一日の中でも波があることが少なくありません。「午前中のほうが頭が動く」「夕方は集中しにくい」といった傾向が自分の中にあるなら、それに合わせて仕事を配置してみる方法があります。

たとえば、判断が必要な仕事や資料づくりは午前に、メールの返信や整理などの作業は午後に、というように。すべてを自分で決められる立場でなくても、「この時間はなるべく集中作業にあてる」と自分の中で決めておくだけでも変わることがあります。

休憩を予定に組み込む

「疲れたら休む」ではなく、「あらかじめ休む時間を入れておく」という考え方に切り替えてみるのもひとつです。疲れを感じてからでは、回復に時間がかかることがあるためです。

1時間に1回は立ち上がって肩を回す、昼休みの最後の5分は目を閉じて静かに過ごす、といった短い休憩でも構いません。カレンダーやスマートフォンのアラームに入れてしまうと、忘れずに続けやすくなります。

「できない日」の逃げ道を用意しておく

調子の悪い日に備えて、あらかじめ手を抜ける部分を決めておくと気持ちが軽くなります。「今日は無理」という日に、夕食は買ってきたものにする、掃除はしない、返信は明日にまわす。そう決めておくことは、いいかげんなことではなく、体力を守るための備えです。

可能であれば、在宅勤務や時差出勤の制度が使えるかを確認しておくのもよいでしょう。「使えるかもしれない選択肢がある」と知っているだけでも、追い詰められにくくなります。

つらさを記録して、見える化してみる

デスクで手を合わせ、目を閉じて呼吸を整えている女性のイラスト

更年期の不調と仕事の両立で、意外と力になるのが「記録」です。理由は3つあります。

1つめは、自分の波が見えるようになることです。毎日つらいように感じていても、記録をとってみると「月の後半に集中している」「天気が崩れる前後にひどくなる」といった傾向が見えてくることがあります。傾向がわかれば、大事な予定を組む時期をずらす、といった対策が立てやすくなります。

2つめは、自分を責めにくくなることです。「今週は何もできなかった」と感じていても、記録を見返すと、実はつらい症状が重なっていた日だったと気づけることがあります。事実として残っていると、感情だけで自分を評価しなくてすみます。

3つめは、人に説明する材料になることです。医師に相談するときも、家族や職場に事情を伝えるときも、「なんとなくつらい」より「この2か月、週に3日はこの症状が出ている」のほうが、相手にも状況が伝わりやすくなります。

記録は、細かくつけるほどよいわけではありません。続かなければ意味がないので、まずは「症状があった/なかった」を毎日ひとつ残すところから始めるのがおすすめです。具体的な書き方は更年期の症状記録のつけ方で紹介しています。いまの状態を大まかに把握したい方は、SMI(簡略更年期指数)を使ったセルフチェックから試してみるのもよいでしょう。

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職場・上司への伝え方のヒント

オフィスのテーブルをはさんで、ふたりの女性がおだやかに話をしているイラスト

「更年期だから」と言い出すのはためらわれる。そう感じる方はとても多いようです。厚生労働省スマート・ライフ・プロジェクトの『女性の更年期に関する意識の実態』調査では、中等度以上(SMI51点以上)の症状がある閉経後5年以上の女性のうち、約7割が誰にも相談したことがないと報告されています。言い出しにくさは、多くの人が共有している感覚といえそうです。

伝えるかどうかは、あくまで本人が決めることです。伝えないという選択も、まったく問題ありません。そのうえで、「伝えたほうが楽になりそうだ」と感じたときのために、いくつかの考え方を挙げておきます。

「原因」より「困っていること」を中心に話す

更年期という言葉を出すことに抵抗があるなら、無理に使う必要はありません。「最近、体調の波があって、午後に集中が続きにくい日があります」というように、相手が対応を考えられる形で伝えるほうが実務的です。

原因の説明は、相手にとって対処のしようがない情報になることがあります。一方、「どんなときに、何が難しいか」は、業務の調整につながりやすい情報です。

お願いしたいことを具体的にひとつ添える

「つらいです」だけで終わると、相手も何をすればよいか分かりません。「午後の会議を午前に動かせないか相談したい」「席の近くに空調の風が直接当たるので、位置を変えられないか」というように、具体的な要望をひとつ添えると話が進みやすくなります。

要望は小さくて構いません。むしろ小さいほうが受け入れられやすく、実現したときに「言ってよかった」と感じられます。

記録があると伝わりやすい

前の章でふれた記録は、ここでも役に立ちます。「なんとなく調子が悪い」ではなく、「先月は8日、こういう症状で午後の作業が難しい日がありました」と伝えられると、相手も状況を具体的に把握しやすくなります。感覚の話ではなく、事実の共有として話せることが強みです。

誰に話すかを選んでよい

直属の上司に話しづらい場合は、人事担当者、産業医、産業保健スタッフ、社内の相談窓口といった選択肢もあります。産業医との面談は、業務内容や体調について守秘義務のもとで相談できる場です。会社に産業医がいるかどうかを一度確認してみてもよいかもしれません。

また、同世代の同僚にだけ話す、家族にだけ話す、という形でも構いません。全員に説明する必要はなく、「話しておくと自分が楽になる相手」を選べばよいのです。家族を含めた周りの人への伝え方については、更年期のつらさを周りに伝える|家族・職場への話し方のヒントもあわせてご覧ください。

休職・時短という選択肢について

症状が重く、日常業務を続けることが難しいと感じるときには、働き方そのものを一時的に変える選択肢もあります。制度の内容は会社によって異なりますが、一般的には次のようなものが考えられます。

  • 年次有給休暇・時間単位年休……つらい日の午後だけ休む、通院の時間だけ抜ける、といった使い方ができる場合があります。
  • 時差出勤・フレックスタイム……朝がつらい方は、始業時刻を後ろにずらせないか相談してみる方法があります。
  • 在宅勤務……通勤の負担が大きい場合、在宅の日を設けられないか確認する価値があります。
  • 短時間勤務……制度として整備されている会社もあります。就業規則を確認してみましょう。
  • 私傷病休職……医師の診断書が必要になることが一般的です。復帰の条件もあわせて確認しておくと安心です。

これらを利用するには、医師の意見書や診断書が必要になることがあります。その意味でも、症状が続いているなら早めに医療機関に相談しておくと、いざというときの選択肢が広がります。

なお、休むことを「負け」のように感じる必要はありません。一時的にペースを落とすことで、長く働き続けられるようになるケースもあります。どうするかを決めるのは自分自身ですが、選択肢を知っておくこと自体に意味があります。

受診の目安|どこに相談すればいい?

次のような状態が続いているときは、一度医療機関に相談してみることをおすすめします。

  • 不調のために仕事のパフォーマンスが落ちている状態が、数週間以上続いている
  • 眠れない日が続き、日中の眠気やだるさが強い
  • 気分の落ち込みが強く、興味や意欲がわかない状態が2週間以上続いている
  • 動悸・息切れ・強い頭痛など、急に症状が強くなった
  • セルフケアを試しても状況が変わらない、あるいは悪化している

更年期の症状は、婦人科・女性外来・更年期外来などで相談できます。心の症状が強い場合は心療内科や精神科が適していることもあります。どこに行けばよいか迷ったときは、更年期の不調はどの科を受診すればよいかを参考にしてみてください。

また、更年期に似た症状が、甲状腺の病気や貧血、うつ病などほかの原因で起きていることもあります。「更年期だから仕方ない」と決めつけず、専門家に確認してもらうことが、遠回りに見えて近道になることがあります。つらい症状が長く続く場合や、急に強い症状が出た場合は、早めに医療機関へご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 更年期のつらさを、職場に伝えたほうがいいのでしょうか?

A. 伝えるかどうかに正解はありません。伝えることで業務の調整がしやすくなる一方、話したくない気持ちも自然なものです。判断の目安としては、「業務に支障が出ていて、調整してもらえれば続けやすくなる」と感じるかどうかです。伝える場合も、原因の説明より「どんな場面で何が難しいか」を中心に話すほうが、相手も対応を考えやすくなります。

Q. 上司が男性で、話しづらいのですが……

A. 直属の上司に話すことだけが方法ではありません。人事担当者、産業医、産業保健スタッフ、社内の健康相談窓口など、ほかの相談先を検討できます。産業医との面談は守秘義務のもとで行われるため、業務調整の必要性だけを上司に伝えてもらう、という形をとれる場合もあります。会社にどんな窓口があるかを確認してみるとよいでしょう。

Q. もの忘れがひどくなった気がして不安です。仕事を続けられるでしょうか?

A. 更年期の時期に、集中しにくさやもの忘れを感じる方は少なくないとされています。ただ、原因が更年期だけとは限らないため、気になる場合は医療機関に相談してみてください。不安を抱えたまま働き続けるより、専門家に確認してもらうほうが気持ちが落ち着くことがあります。日付とあわせて症状を記録しておくと、相談のときに状況を伝えやすくなります。

Q. 記録をつけると、本当に仕事の助けになりますか?

A. 記録そのものが症状をやわらげるわけではありませんが、「不調が出やすい時期の傾向をつかむ」「医師や職場に状況を具体的に伝える」といった場面で役立つことがあります。まずは1日ひとつ、症状の有無だけを残すところから始めてみてください。続けやすい形については更年期の体調日記の書き方でも紹介しています。

まとめ

更年期の不調が仕事に影響するのは、努力が足りないからでも、気持ちの問題でもありません。ホルモンの変化にともなって、心と体の土台が揺らぎやすくなる時期に、たまたま仕事の責任が重なっているだけのことです。

できることは、大きく3つあります。ひとつは、体温調節や休憩の取り方など、日々の小さな工夫を積み重ねること。ふたつめは、つらさを記録して見える化すること。そして3つめは、必要なときに人に伝え、相談することです。

全部を一度にやろうとしなくて大丈夫です。今日は「体温調節しやすい服にする」だけでも、「記録をひとつ残す」だけでも十分です。小さな一歩が積み重なると、数週間後には自分の傾向が見えてきて、次の判断がしやすくなります。

ひとりで抱え込まなくていい状況です。相談できる場所は、思っているよりたくさんあります。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療を目的とするものではありません。症状の出方や適した対処には個人差があります。つらい症状が続く場合や気になる変化がある場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。また、勤務先の制度の詳細は就業規則や人事担当窓口でご確認ください。

【参考情報源】厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査」基本集計結果(2022年)/厚生労働省 スマート・ライフ・プロジェクト『女性の更年期に関する意識の実態』調査/日本女性医学学会/公益社団法人 女性の健康とメノポーズ協会/厚生労働省 ヘルスケアラボ

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この記事を書いた人

更年期ゆらぎ記録アプリ「ゆらぎとわたし」の運営・編集担当。「不調の波を、ひとりで抱え込まない」を合言葉に、30〜50代の女性が自分の体調とやさしく向き合えるよう、記録・セルフチェック・気圧予報などの機能づくりと情報発信に取り組んでいます。医療の専門家ではありませんが、公的機関や学会の情報をもとに、受診の助けになる正確でやわらかい情報をお届けすることを大切にしています。

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