「なんだか最近、体調が安定しない」——そう感じているのに、いざ人に説明しようとすると言葉が出てこない。40代・50代の女性から、そんな声をよく聞きます。だるさも、寝つきの悪さも、急なほてりも、どれも「まあ、そんな日もあるか」とやり過ごしているうちに、いつからそうだったのかさえ思い出せなくなってしまうものです。
そこで役に立つのが、体調日記です。特別なことを書く必要はありません。今日の自分の状態を、ほんの数行、あるいは印ひとつ残しておく。それだけで、あとから見返したときに「あ、雨の前の日はいつもつらいかも」「先月より夜中に目が覚める回数が減っている」といった、自分だけの傾向が浮かび上がってくることがあります。
この記事では、更年期の体調日記に書いておくとよい項目を、そのまま使えるテンプレートの形で紹介します。あわせて、三日坊主になりにくい書き方の工夫、手書きとアプリの向き・不向き、そして書きためた記録を受診の場でどう活かすかまで、順を追ってやさしく整理していきます。
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体調日記とは?「なんとなく不調」を言葉にするための道具

体調日記とは、その日の体と心の状態を短く書き残しておくノートのことです。日記というと出来事や気持ちをつづるものを思い浮かべるかもしれませんが、体調日記の目的は文章を書くことそのものではありません。あとから見返して、自分の変化に気づけることが目的です。
更年期といわれる時期は、女性ホルモンの分泌が大きくゆらぐことで、体にも心にもさまざまな変化が起こりやすいとされています。ほてり、発汗、動悸、気分の落ち込み、関節の痛みなど、あらわれ方は人によって本当にさまざまで、しかも日によって強くなったり弱くなったりします。この「日によって違う」という点が、実はとても厄介です。
診察室で「調子はいかがですか」と聞かれても、たまたま調子のよい日に受診すれば「まあ、大丈夫です」と答えてしまいますし、つらい日に受診すれば「ずっとつらいです」と伝えてしまう。どちらも嘘ではないのですが、実際のところどれくらいの頻度でつらいのかは、記憶だけではなかなか正確に伝えられないものです。
体調日記は、この記憶のあいまいさを補ってくれます。1か月分の記録が手元にあれば、「今月は30日のうち12日、強いほてりがあった」というように、具体的な形で伝えられるようになります。どんな症状があらわれやすいのかを知りたい方は、更年期の症状一覧もあわせてご覧ください。
体調日記をつけると、どんないいことがあるの?
「書いても意味があるのかな」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。記録を続けることで期待できるとされているのは、主に次の4つです。
1. 自分の傾向がつかめる
数週間から数か月分がたまると、点だった記録が線としてつながって見えてきます。「生理の前の数日は特に落ち込みやすい」「連休明けにだるさが強い」「雨が近づくと頭が重い」など、これまで気のせいだと思っていたことに、ある種のパターンが見えてくることがあります。パターンがわかれば、「明日は無理をしない日にしよう」と先に手を打てるようになります。
2. 受診のときに伝えやすくなる
診察の時間は限られています。その場で思い出しながら話すよりも、記録を見ながら「この2か月で、めまいがあった日は7日でした」と伝えるほうが、はるかに短い時間で正確に伝わります。医師にとっても、経過が見える情報は診療の助けになるとされています。
3. 変化に気づける
セルフケアを始めたり、医師と相談して治療を始めたりしたとき、その前後で何がどう変わったのかを比べられます。体調の変化はゆるやかなことが多く、記憶だけでは「よくなった気がする」以上のことは言いにくいものです。記録があれば、変化を落ち着いて見守ることができます。
4. 気持ちが少し軽くなる
これは数字にしにくい効果ですが、書き出すこと自体が心を整理する助けになったという声は少なくありません。「つらい」を頭の中でぐるぐる回し続けるかわりに、紙や画面の上にいったん置いてしまう。それだけで、少し距離を取って眺められるようになることがあります。
ちなみに、症状を自覚していても医療機関を受診していない女性は、40代で81.7%にのぼるという調査結果があります(厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査」基本集計結果、2022年)。受診をためらう理由はさまざまですが、「何をどう伝えればいいかわからない」という不安も、そのひとつではないでしょうか。記録はその不安をやわらげる材料になりえます。
体調日記に書きたい基本の項目【テンプレート付き】

では、実際に何を書けばよいのでしょうか。すべてを完璧に埋める必要はありません。まずは「必ず書く3つ」から始めて、余裕があるときに他の項目を足すという考え方がおすすめです。
必ず書きたい3つの項目
- 日付……あとで振り返るときの土台になります。曜日も入れておくと、平日と休日の違いに気づきやすくなります。
- 今日の全体の調子……5段階や3段階で十分です。「◎・○・△」でも、点数でもかまいません。とにかく毎日同じものさしで測ることが大切です。
- 気になった症状……あったものだけ書きます。なければ「なし」と書くか、空欄のままで大丈夫です。
余裕があれば書きたい項目
- 症状の強さ……「軽い・中くらい・つらい」の3段階など。同じ「頭痛」でも、日常生活に支障が出たかどうかで意味が変わってきます。
- 睡眠……何時ごろ寝て、何時ごろ起きたか。夜中に目が覚めた回数も、わかる範囲で。
- 月経の有無……開始日と終了日だけでも記録しておくと、周期の変化がつかみやすくなります。
- 天気・気圧……晴れ・くもり・雨のマークだけでも十分です。低気圧が近づく日の体調と照らし合わせられます。
- 飲んだ薬・サプリ……市販薬を含めて記録しておくと、受診のときに医師や薬剤師へ正確に伝えられます。
- その日の出来事・気持ち……ひとことで十分です。「来客あり、疲れた」「久しぶりに散歩できた」など。
そのまま使えるテンプレート例
手書きで始める方は、次のような形をノートの1ページに書き写しておくと、毎日同じ形式で埋められます。
- ◯月◯日( ) 天気:晴/くもり/雨
- 今日の調子:◎/○/△/×
- 気になった症状:( )強さ:軽・中・強
- 睡眠: 時〜 時/夜中に目覚めた: 回
- 月経:あり/なし
- 薬・サプリ:( )
- ひとこと:( )
1日あたり30秒から1分で埋まる分量が目安です。書くことが多すぎると続きません。項目を減らす勇気も、続けるうえでは大切だとされています。書き方をもう少し具体的に知りたい方は、更年期の症状記録のつけ方で、記録する内容の選び方をさらに掘り下げて解説しています。
三日坊主にならない書き方の工夫

記録の効果は、続いてはじめて実感できるものです。とはいえ、毎日きちんと書き続けるのは簡単ではありません。続けている方が実践している工夫を、いくつか紹介します。
書く時間と場所を決めてしまう
「思い出したときに書く」だと、たいてい忘れます。歯みがきのあと、ベッドに入る前、朝のコーヒーを飲みながら——生活の中ですでに毎日やっていることの直後にくっつけてしまうと、習慣になりやすいといわれています。ノートも、その場所に置きっぱなしにしておくのがコツです。
「書けなかった日」を責めない
1日抜けても、1週間抜けても、記録の価値はなくなりません。空白の日があること自体が「その時期は余裕がなかった」という情報になります。完璧を目指すと、途切れたときにそのままやめてしまいがちです。週に4日書けていれば十分くらいの気持ちで始めるほうが、結果的に長続きします。
記号やマークを活用する
文章で書こうとすると負担が大きくなります。○△×、天気マーク、シールや色ペンなど、目で見てすぐわかる記号に置きかえてしまいましょう。あとから見返すときも、記号のほうがパターンを見つけやすいという利点があります。
まとめ書きも「あり」にする
その日に書けなかったぶんを、週末にまとめて思い出しながら書く方法もあります。細かい部分の正確さは落ちますが、「だいたいこの週はつらかった」という粒度でも、傾向をつかむには役立ちます。何もない状態よりはずっと良い、と考えてみてください。
目的を思い出せるようにしておく
ノートの1ページ目に「なぜ記録するのか」を書いておく方もいます。「次の受診でちゃんと伝えるため」「自分の波を知るため」など、目的がはっきりしていると、面倒に感じたときに立ち返る場所になります。
記録・見える化のすすめ|書いたら「読み返す」までがワンセット

体調日記でいちばんもったいないのは、書きためたまま一度も読み返さないことです。記録の本当の価値は、書く瞬間ではなく、あとからまとめて眺めたときにあらわれます。
おすすめは、月に一度、5分だけ読み返す時間をつくることです。1か月分を並べて眺めると、その場では気づかなかったことが見えてきます。たとえば——
- 調子が「△」だった日は月に何日あったか
- その日は月経の前後だったか、それとも天気が崩れた日だったか
- 先月と比べて、つらい日は増えたか減ったか
- よく眠れた翌日は、気分がどうだったか
こうした振り返りは、紙のノートでも十分にできます。ただ、数か月分を数えたり、天気と重ね合わせたりする作業は、正直なところ手間がかかります。そこを自動でやってくれるのが、記録アプリの得意なところです。今の状態を点数で確かめてみたい方は、SMI(簡略更年期指数)を使ったセルフチェックから始めてみるのもよいでしょう。10項目に答えるだけで、心と体の状態を数字として眺められます。
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「今月つらかった日は何日だったか」を数えるのは、思っている以上に手間のかかる作業です。ゆらぎとわたしなら、気になる症状をワンタップで残すだけで、SMIスコアの推移と気圧予報が同じ画面に並びます。月経の記録や飲んだお薬もいっしょに管理できるので、あとから読み返す作業がぐっとらくになります。記録・セルフチェック・気圧予報はすべて無料。
手書きとアプリ、どちらが向いている?
どちらが優れているということはありません。それぞれに向き・不向きがありますので、自分の性格や生活に合うほうを選ぶ、あるいは両方を使い分けるのが現実的です。
手書きが向いている場面
文字を書くこと自体が気持ちの整理になる方、画面を見る時間を増やしたくない方には、紙のノートが合っています。自由度が高く、線を引いたり、思いついたことを余白に書き足したりと、形式にしばられずに残せるのが強みです。デジタルの操作に苦手意識がある方にとっても、始めるハードルがいちばん低い方法でしょう。
一方で、外出先では持ち歩きにくいこと、あとから集計するのに手間がかかること、紛失のリスクがあることは弱点になります。
アプリが向いている場面
スマートフォンをいつも持ち歩いている方、記録の集計やグラフ化まで求めたい方には、アプリが向いています。入力がタップだけで済むものが多く、外出先でも数秒で残せます。データが自動でグラフになったり、気圧の情報と重ねて表示されたりするのは、紙では難しい部分です。
ただし、通知が煩わしく感じられたり、アプリを開くこと自体が面倒になったりすることもあります。どんな視点で選べばよいかは、更年期の記録アプリの選び方で、続けやすさや受診での使いやすさの観点から整理しています。
両方を組み合わせる方法も
「日々の記録はアプリでワンタップ、月に一度の振り返りだけノートに手書き」という使い分けをしている方もいます。それぞれの得意なところだけを使う、という発想です。
更年期ならではの視点|月経・気圧・気分の波もいっしょに
更年期の体調日記には、一般的な健康記録とは少し違う、この時期ならではの視点があります。
月経周期との重なり
更年期に入ると、月経の周期が短くなったり長くなったり、量が変わったりと、乱れやすくなるとされています。周期が不規則になると、体調の変化がホルモンの動きと関係しているのかどうかが見えにくくなります。だからこそ、月経の記録と体調の記録を同じ場所に残しておくことに意味があります。記録の方法については、更年期の生理の変化を記録するコツで詳しく解説しています。
天気・気圧との重なり
低気圧が近づくと頭が重くなる、雨の日は起きられない——こうした感覚を持つ方は少なくありません。更年期の不調と気象の影響は重なって感じられることがあり、切り分けるのが難しい部分です。天気マークをひとつ書き添えておくだけでも、あとから見返したときの手がかりになります。気圧を先読みして備える考え方は、気圧予報を体調管理に活かすコツにまとめています。
気分の波との重なり
体の症状だけでなく、気分の落ち込みやいらだちも記録しておくことをおすすめします。心の変化は自分では気づきにくく、あとから見返して初めて「あの時期は続いていたんだ」とわかることがあります。ただし、記録を見て自分を責める材料にしないでください。あくまで、状態を知るための材料です。
受診の目安と、日記の活かし方
体調日記はセルフケアの助けになりますが、記録そのものが治療になるわけではありません。つらい症状が続くとき、日常生活に支障が出ているとき、急に強い症状があらわれたときは、記録の有無にかかわらず医療機関にご相談ください。とくに、これまで経験したことのない強い痛み、意識が遠のくような感覚、息苦しさが続く場合などは、早めの受診が大切だとされています。
受診のときに持っていくとよいもの
診察室では緊張して伝えたいことを忘れがちです。記録は、その保険になります。持っていくとよいのは次のようなものです。
- ここ2〜3か月の体調の記録(つらかった日の数がわかる形で)
- いちばん困っている症状を1〜2つに絞ったメモ
- 月経の直近の記録
- 飲んでいる薬・サプリの一覧(市販薬も含めて)
- 聞きたいことのリスト
ノートをそのまま渡すのではなく、要点をまとめた1枚があると、限られた診察時間を有効に使えます。初診で何を聞かれるのかを事前に知っておきたい方は、婦人科の初診で何を聞かれる?もあわせてご覧ください。当日の流れや持ち物がイメージしやすくなります。
どこに相談すればよいか迷ったら
更年期の不調は、症状によって相談先が変わることがあります。婦人科が入口になることが多いとされていますが、症状によっては内科や整形外科、心療内科が適している場合もあります。判断に迷ったときは、更年期の不調は病院の何科?で診療科の選び方を整理していますので、参考にしてみてください。書きためた内容を家族や職場に伝えるときの言葉選びは、更年期のつらさを周りに伝える話し方のヒントで紹介しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 毎日書かないと意味がないですか?
いいえ、そんなことはありません。週に数日でも、傾向をつかむ手がかりにはなります。むしろ「毎日書かなければ」と気負って途中でやめてしまうほうが、もったいないといえます。書けない日があってもかまわない、というゆるさで始めてみてください。
Q. どれくらいの期間、続ければいいですか?
目安として、まずは1か月続けてみて、月末に読み返してみることをおすすめします。傾向が見えてくるまでには2〜3か月ほどかかることが多いとされていますが、1か月分でも受診時に伝える材料としては十分に役立ちます。
Q. 記録を見ていると、かえって不安になってしまいます。
つらい日ばかりが並んでいるように見えると、気持ちが沈んでしまうことがあります。そんなときは、しばらく読み返すのを休んでもかまいません。また、「調子がよかった日」も同じように記録しておくと、記録全体の見え方が変わってきます。不安が続くようであれば、記録を持って医療機関で相談することも考えてみてください。
Q. 家族に見られたくないのですが、どうすればいいですか?
体調や気持ちの記録は、とてもプライベートな情報です。紙のノートであれば保管場所を決めておく、アプリであればスマートフォンの画面ロックをかけておくなど、自分が安心できる形を選んでください。安心して書ける環境であることは、続けるうえでも大切な条件です。
Q. 手書きの記録をアプリに移したほうがいいですか?
過去のぶんを無理に入力し直す必要はありません。これからのぶんをアプリで記録し、手書きのノートは振り返り用に手元に残しておく、という形でも十分です。大切なのは、記録が途切れずに続くことです。
まとめ
更年期の体調日記は、特別な技術も、まとまった時間も必要としません。日付と今日の調子、気になった症状——この3つから始めれば十分です。書く時間を生活の中に組み込み、書けない日は責めず、月に一度だけ読み返す。それだけで、これまで「なんとなく」でしかなかった不調が、少しずつ形のあるものに変わっていきます。
そしてその記録は、あなた自身の傾向を教えてくれるだけでなく、いざ医療機関を受診するときに、限られた診察時間で正確に伝えるための味方になります。書くことは、自分の体を丁寧に扱う小さな習慣です。今日の1行から、気負わずに始めてみてください。
🌸 今日の1タップから、はじめてみませんか|ゆらぎとわたし
ノートを開くのが億劫な日でも、アプリなら数秒で今日の調子を残せます。数週間つづけるうちに、自分の不調がどんなときに強まるのかという傾向が見えてきます。たまった記録は受診サマリーとして1枚にまとまるので、診察室でそのまま医師に見せられます。無料ではじめられます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療を目的とするものではありません。症状の感じ方やあらわれ方には個人差があります。つらい症状が続く場合、急に強い症状があらわれた場合、日常生活に支障が出ている場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。
【参考情報源】
・厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査」基本集計結果(2022年)
・小山嵩夫「簡略更年期指数(SMI)」
・日本女性医学学会
・公益社団法人 女性の健康とメノポーズ協会
・厚生労働省 女性の健康推進室 ヘルスケアラボ

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