更年期のつらさを周りに伝える|家族・職場への話し方のヒント

リビングのテーブルで家族とおだやかに向き合って話す40〜50代の女性のイラスト

「疲れてるだけでしょ」と流されてしまった。「そんなに大変そうに見えないけど」と言われて、それ以上は話せなくなった。がんばって説明してみたけれど、うまく伝わらなかった気がして、次からは黙っておこうと思った――。更年期のつらさを周りに話そうとして、もどかしい思いをしたことがある方は少なくありません。

更年期のゆらぎは、外から見えにくいのが難しいところです。骨折のように目に見えるわけでも、熱が出て数字に表れるわけでもない。しかも日によって、時間帯によって、波があります。昨日は元気に見えた人が、今日はつらそうにしている。そのことが、周りには「気分の問題」に見えてしまうことがあるのです。

けれど、伝えることをあきらめなくても大丈夫です。伝わりにくいのには理由があり、その理由がわかれば、伝え方を少し変えるだけで届き方が変わることがあります。この記事では、家族や職場にどう話すかを具体例で整理し、記録を使った説明のしかたもあわせてご紹介します。ひとりで抱え込まずにすむための、小さな手がかりになればうれしいです。

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目次

なぜ、更年期のつらさは周りに伝わりにくいのか

静かな部屋の窓辺で外をながめながら思いをめぐらせる女性のイラスト

伝わらないのは、あなたの説明が下手だからではありません。この時期の不調には、そもそも伝わりにくい性質がいくつも重なっています。

目に見えず、数字にも表れにくい

ほてり、だるさ、気持ちの落ち込み、眠りの浅さ。どれも本人にしかわからない感覚です。相手からは「いつもと同じように見える」ため、深刻さが伝わりません。ギプスをしていれば誰もが気づいてくれますが、この不調にはそれがないのです。

日によって波がある

更年期のゆらぎは、日ごとに大きく変わることがあります。元気な日があるからこそ、つらい日が「気の持ちよう」に見えてしまう。「この前は平気そうだったのに」という言葉に傷ついた経験がある方もいるかもしれません。

症状の数が多く、まとまりがない

ほてりもあるし、眠れないし、イライラもするし、関節も痛い。ひとつひとつを説明していると話が散らかってしまい、聞くほうも要点がつかめません。伝えたいことが多すぎて、かえって伝わらないという状況が起きます。

「更年期」という言葉の受け取られ方

この言葉には、まだ古いイメージがつきまとうことがあります。冗談めかして使われたり、「年齢のせい」で片づけられたり。そのため、言葉にすること自体をためらってしまう方もいます。更年期に何が起きているのかを整理した更年期はいつからいつまで?更年期の症状一覧を、相手に読んでもらうという方法もあります。

自分でも、うまく言葉にできていない

「なんとなくしんどい」としか言えないとき、それは説明能力の問題ではなく、症状そのものがつかみどころのないものだからです。自分でも把握しきれていないことを、他人に伝えるのは難しくて当たり前です。

伝える前に整理しておきたい3つのこと

話す前に、少しだけ考えをまとめておくと、驚くほど伝わりやすくなります。完璧な準備は必要ありません。次の3つを、頭のなかで、あるいはメモに一行ずつ書き出してみてください。

1. いちばん困っていることは何か

症状をすべて並べるのではなく、「いま自分がいちばん困っていること」をひとつ選びます。「夜眠れなくて、朝がつらい」「急に汗が出て、人と会うのが不安」。ひとつに絞ると、相手も受け取りやすくなります。

2. 相手にしてほしいことは何か

これがいちばん大切かもしれません。多くの場合、聞かされた側は「どう反応すればいいかわからない」ために、的外れな言葉を返してしまいます。「ただ聞いてほしいだけ」なのか、「家事を少し代わってほしい」のか、「その日は静かにしておいてほしい」のか。具体的に伝えると、相手も動きやすくなります。

3. どのくらい続きそうか

期間の見通しがあると、相手の受け止め方が変わります。「一生このまま」ではなく「数年のあいだ、波がある時期」と伝えられれば、お互いに構えすぎずにすみます。ただし経過には個人差があるので、断定せず「人によって違うけれど」と添えるのが自然です。

家族に伝えるときのヒント

ダイニングテーブルでお茶を飲みながら夫とおだやかに話す女性のイラスト

いちばん近い相手だからこそ、かえって話しにくいことがあります。甘えていると思われたくない、心配をかけたくない、という気持ちが働くからです。

タイミングを選ぶ

つらさのピークにいるときに話すと、感情が先に出てしまい、伝えたいことが伝わりにくくなります。できれば比較的落ち着いているとき、相手にも余裕があるときを選んでみてください。食事のあとや、休日の午前中など、急かされない時間帯が向いています。

「体の変化」として話す

「わたしがつらい」だけでは、気持ちの問題と受け取られることがあります。「女性ホルモンが減っていく時期で、体にいろいろな変化が出るらしい」という言い方にすると、体の話として受け止めてもらいやすくなります。

してほしいことをセットで伝える

次のような伝え方が、実際に役立ったという声があります。

  • 「急に汗が出ることがあるから、そういうときは気にしないでもらえると助かる」
  • 「夜眠れない日が続いていて、朝がしんどい。朝ごはんの片づけを代わってもらえたら助かる」
  • 「イライラしてしまう日がある。あなたに怒っているわけじゃないから、そのときは少し距離をとってほしい」
  • 「今日は調子がよくないから、静かに過ごしたい」

とくに「あなたのせいではない」と伝えておくのは大切です。急に不機嫌になったように見えると、家族は自分が何かしたのかと考えてしまうことがあります。

子どもには、年齢に合わせて

小さなお子さんには「お母さんは今ちょっと体が疲れやすい時期なんだ」くらいでも十分です。思春期以上のお子さんであれば、もう少し具体的に話しても構いません。「病気ではないけれど、体が変わる時期なんだよ」と伝えることは、いつか本人が同じ時期を迎えるときの助けにもなります。

パートナーが理解を示してくれないとき

何度伝えても届かないこともあります。その場合、あなたの伝え方が悪いのではなく、相手側にまだ受け取る準備がないのかもしれません。無理に一度でわかってもらおうとせず、記事を見せる、受診に一緒に来てもらう、といった別の入り口を試してみてください。それでも難しいときは、家族以外に相談できる相手を持つことが、あなたを守ってくれます。

職場に伝えるときのヒント

オフィスの打ち合わせスペースで同僚と落ち着いて話をする女性のイラスト

職場では、家族以上に「どこまで話すか」の判断が難しくなります。まず前提として、すべてを話す義務はありません。どこまで開示するかは、あなたが決めてよいことです。

「更年期」と言わない選択肢もある

言葉にしたくなければ、「体調に波がある時期で」「通院していて」といった伝え方でも十分に用は足ります。相手が知る必要があるのは、病名ではなく「どんな配慮があれば働きやすいか」だからです。

困りごとと配慮をセットで伝える

職場では、感情ではなく業務の話として整理すると伝わりやすくなります。

  • 「急に汗が出ることがあるので、席の空調を少し調整させてもらえますか」
  • 「午前中に体調が不安定な日があります。可能なら重要な打ち合わせを午後にしていただけると助かります」
  • 「月に何度か通院したいので、その日は時間休をいただけますか」
  • 「体調に波がある時期なので、急に休む日が出るかもしれません。そのときは早めに連絡します」

誰に伝えるかを選ぶ

全員に話す必要はありません。直属の上司だけ、あるいは信頼できる同僚ひとりだけ、という選び方でも構いません。人事や産業医、保健師が相談窓口になっている職場もあります。誰に話すかを自分で選べること自体が、気持ちの負担を軽くしてくれます。

働き方の調整も選択肢のひとつ

つらさが強い時期には、勤務時間や業務量の調整を相談するという方法もあります。仕事との折り合いについては更年期がつらくて仕事に影響…で、働き方の工夫をくわしく整理しています。

記録・見える化のすすめ

木のテーブルに開いたノートとスマートフォン、ペンを並べた記録のイメージイラスト

言葉で伝えるのが難しいとき、いちばん心強い味方になるのが記録です。目に見えない不調が、目に見える形になるからです。

難しく考える必要はありません。次のような項目を、気づいたときに残しておくだけで十分です。

  • その日の調子(よい・ふつう・つらい など)
  • 気になった症状(ほてり、汗、だるさ、イライラ、眠りの浅さ など)
  • 症状が出た時間帯
  • できなかったこと、しんどかった場面
  • 天気・気圧の変化

数週間分たまると、それは「証拠」ではなく「地図」になります。「今月は10日つらい日があった」「午前中に集中している」「天気が崩れる日に多い」。こうした事実は、感情を交えずに状況を伝えてくれます。

そして何より、記録は言葉にしなくても差し出せるのが利点です。うまく説明できる自信がないとき、画面を見せるだけでも伝わります。「こういう感じなんだ」と一言添えれば十分です。書き方のコツは更年期の症状記録のつけ方で、続けやすい形式は更年期の体調日記の書き方で紹介しています。

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「わかってもらえない」がつらいときに

伝える工夫をしても、届かないことはあります。そんなとき、「自分の伝え方が悪いのだ」と責めてしまう方がいますが、そうではありません。相手にも、受け取れる準備ができているかどうかという事情があります。

厚生労働省のスマート・ライフ・プロジェクトによれば、中等度以上の症状があっても誰にも相談していない方が約7割いるとされています。つまり、多くの方が同じように「言えないまま」過ごしているということです。あなただけが孤立しているわけではありません。

ひとりの相手にわかってもらえなくても、ほかに理解してくれる人がいることがあります。同世代の友人、同じ経験をした先輩、かかりつけの医師や看護師。話せる相手をひとつに絞らないことが、気持ちを守ってくれます。

そして、医療機関は「わかってくれる場所」のひとつです。診察室では、症状を疑われることなく、前提として受け止めてもらえます。それだけでも、気持ちが軽くなったという声は多く聞かれます。

受診の目安と、何科に相談する?

厚生労働省が2022年に公表した調査では、更年期に関係すると思われる症状を自覚していても医療機関を受診していない女性は、40代で81.7%、50代で78.9%にのぼると報告されています。「相談するほどではない」と感じてしまう方が多いのですが、生活のなかで困っていること自体が、相談してよい理由になります。

とくに次のような場合は、早めに医療機関へ相談することをおすすめします。

  • 仕事や家事に支障が出ている
  • 眠れない日が続いて、日中のつらさにつながっている
  • 気持ちの落ち込みが強く、何をしても楽しめない
  • 人と会うのを避けるようになっている
  • 急に強い症状が出た、あるいは短期間で変化した
  • 周りに相談できず、ひとりで抱え込んでいる

つらい症状が続く場合や、急に強い症状が出た場合は、我慢せずに医療機関にご相談ください。とくに気持ちの落ち込みが強く日常生活に支障が出ているときは、早めに専門家に相談することが大切です。

相談先としては、まず婦人科が挙げられます。どこに行けばよいか迷ったときは更年期の不調は病院の何科?を、相談しやすい医療機関の探し方は更年期外来・専門医の選び方を参考にしてみてください。初診の流れが不安な方は婦人科の初診で何を聞かれる?で準備をまとめています。

よくある質問(FAQ)

夫にどう切り出せばいいかわかりません

いきなり本題に入らなくても大丈夫です。「最近、体の調子のことで気になっていることがあって」と前置きしてから、いちばん困っていることをひとつだけ話してみてください。全部を一度に伝えようとしないほうが、かえって届きます。話すのが難しければ、記録の画面を見せる、この記事のようなページを見せる、という方法もあります。

職場に伝えたら、評価に影響しませんか?

職場の風土によって事情は異なるため、一律にお答えすることはできません。不安がある場合は、まず信頼できるひとりに相談してみる、あるいは「更年期」という言葉を使わずに「体調に波がある」という伝え方にとどめる、という選択もあります。産業医や保健師など、人事評価とは切り離された相談先がある職場もありますので、確認してみてください。

親や義理の家族にも話すべきでしょうか?

話すかどうかは、あなたが決めてよいことです。「話さなければならない」相手はいません。話すことで楽になりそうな相手にだけ、話せばよいと考えてみてください。

症状を大げさに言っていると思われないか心配です

その心配はよくわかります。だからこそ記録が役に立ちます。「つらい」という言葉より、「今月は10日つらい日があった」という事実のほうが、感情の話ではなく状況の話として受け取られやすくなります。更年期のセルフチェック(SMI)のようなものさしを使って、いまの状態を大まかに把握しておくのもひとつの方法です。

周りに話すことで、かえって気を遣わせませんか?

そう感じる方は多いのですが、実際には「知らなかったから、どう接していいかわからなかった」という側の戸惑いもあります。してほしいことを具体的に伝えれば、相手はむしろ動きやすくなります。気を遣わせないために黙っているつもりが、お互いの距離を広げてしまうこともあるのです。

まとめ

更年期のつらさが周りに伝わりにくいのは、症状が目に見えず、日によって波があり、数が多くてまとまりにくいという性質があるからです。あなたの伝え方が悪いわけではありません。

伝えるときは、「いちばん困っていること」「してほしいこと」「どのくらい続きそうか」の3つを整理してみてください。家族には体の変化として、してほしいことをセットで。職場には業務の話として、必要な配慮だけを。すべてを話す必要はなく、どこまで話すかはあなたが決めてよいことです。

そして、言葉にするのが難しいときは、記録という手があります。目に見えない不調が目に見える形になれば、うまく説明できなくても伝わります。

それでも届かない相手がいたとしても、あなたが我慢すべきだということにはなりません。話せる相手をひとつに絞らず、医療機関という「前提として受け止めてもらえる場所」も選択肢に入れてみてください。ひとりで抱えなくていいのです。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療を目的とするものではありません。症状の感じ方や適した対応には個人差があります。症状が続く場合や気になる場合は、医療機関にご相談ください。

【参考情報源】厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査」(2022年)/厚生労働省 スマート・ライフ・プロジェクト

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この記事を書いた人

更年期ゆらぎ記録アプリ「ゆらぎとわたし」の運営・編集担当。「不調の波を、ひとりで抱え込まない」を合言葉に、30〜50代の女性が自分の体調とやさしく向き合えるよう、記録・セルフチェック・気圧予報などの機能づくりと情報発信に取り組んでいます。医療の専門家ではありませんが、公的機関や学会の情報をもとに、受診の助けになる正確でやわらかい情報をお届けすることを大切にしています。

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