これまで使っていた化粧水が、なんだかしみるようになった。夜になるとすねやせなかがむずむずして、気づけばかいてしまっている。セーターを着ると、チクチクして落ち着かない――。40代、50代を迎えたころから、肌の感じ方が変わったと戸惑う方は少なくありません。
「体調のことなら相談しやすいけれど、肌のことは自分の手入れが足りないだけかもしれない」。そう思って、ひとりでスキンケアを見直しては、また合わなくて振り出しに戻る。そんなくり返しに疲れてしまっている方もいるかもしれません。
けれど、更年期の時期に肌の乾きやかゆみが気になりはじめるのには、体のなかで起きている変化という背景があると考えられています。手入れの仕方だけの問題ではないのです。この記事では、この時期に肌がゆらぎやすくなる理由をやさしく整理し、日常のなかで試しやすい工夫と、皮膚科など医療機関に相談する目安をご紹介します。肌とけんかせず、うまくつき合っていくための手がかりになればうれしいです。
🌸 更年期のゆらぎを、医師に見せられる1枚に「ゆらぎとわたし」
肌の調子が気になった日をワンタップで記録。SMIスコアや気圧・季節の変化とならべると、ゆらぎの波が少しずつ見えてきます。記録・セルフチェック・気圧予報はすべて無料。
更年期に肌が乾きやすくなる背景

40代後半から50代にかけては、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの分泌が大きく変わっていく時期にあたります。エストロゲンは月経にかかわるだけでなく、全身のさまざまな組織に影響していると考えられており、そのなかには皮膚も含まれるとされています。
具体的には、肌のうるおいを抱え込む力や、皮脂・汗の出方、肌のはりを支える組織などに、エストロゲンが関係していると説明されることがあります。この時期にエストロゲンが減っていくことで、肌の水分が保たれにくくなったり、外からの刺激を受けやすくなったりすることがあると考えられています。
肌の表面には、うるおいを閉じ込めて外の刺激から体を守る「バリア機能」と呼ばれるはたらきがあります。このバリアがゆらぐと、水分が逃げやすくなるだけでなく、これまで平気だった化粧品や衣類の繊維、汗、洗剤といったものにも反応しやすくなることがあります。「急に今までの化粧水がしみるようになった」という戸惑いには、こうした背景があるのかもしれません。
さらに、加齢そのものによる変化も重なります。年齢を重ねると、肌の生まれ変わりのペースがゆっくりになり、うるおいのもとになる成分も少しずつ変わっていくと言われています。更年期の変化と年齢による変化が同じ時期に重なるため、「急に変わった」と感じやすいのです。
そしてもうひとつ見落とせないのが、眠りや気持ちの状態です。眠りが浅い日が続いたり、気を張った日が重なったりすると、肌の調子にも響くと感じる方は多いようです。心と体と肌は、思っている以上につながっています。更年期にあらわれやすいサイン全体は更年期の症状一覧で整理していますので、あわせてご覧ください。
どんな出方をする? 肌のゆらぎのパターン
「乾燥」「かゆみ」とひとことで言っても、感じ方は人によってさまざまです。自分がどのタイプに近いかを知っておくと、対策も選びやすくなり、医療機関で相談するときにも伝えやすくなります。
全体的にカサつく・粉をふく
すね、ひじ、せなか、腰まわりなど、皮脂の少ない部分から乾きが目立ちはじめることがよくあります。入浴後に白く粉をふいたようになる、下着の跡がくっきり残る、といった変化に気づく方もいます。
夜になるとかゆくなる
日中は気にならないのに、布団に入って体があたたまると、むずむずしてかきたくなる。これは乾燥した肌によく見られるパターンだと言われています。かくとその場は楽になっても、肌の表面がさらに傷ついて、またかゆくなる――という循環に入りやすいのがつらいところです。
化粧品がしみる・赤くなる
長年愛用していた化粧水がピリピリする、ファンデーションののりが変わった、頬が赤らみやすくなった。バリア機能がゆらいでいるときに起こりやすい変化とされています。「肌に合わなくなった」のであって、あなたの手入れが雑になったわけではありません。
顔がテカるのに、ほおは乾く
おでこや鼻はベタつくのに、ほおや口元はカサカサする。こうした混在した状態に戸惑う方もいます。同じ顔のなかでも部位によって皮脂の出方が違うため、一律のケアでは合わないことがあるのです。
ほてりや汗のあとに、かゆくなる
ホットフラッシュのあとに汗が引いて、その部分がかゆくなるという声もあります。汗そのものが刺激になったり、汗が乾くときに肌のうるおいまで奪われたりすることがあると言われています。ほてりや発汗が気になる方は、更年期の汗と冷えもあわせて参考にしてみてください。
気になりやすいタイミングと、重なりやすい要因
肌のゆらぎは、次のような条件が重なるときに強く感じられることがあります。あてはまるからといって心配しすぎる必要はなく、「そういう傾向があるらしい」という程度に受け止めてください。
- 空気が乾く秋から冬にかけての季節
- エアコンや暖房の効いた部屋で長時間過ごす日
- 熱いお湯に長く浸かった日、体をゴシゴシ洗った日
- ウールやチクチクする素材の衣類を着た日
- 眠りが浅く、疲れがたまっている時期
- 気を張る予定が続いているとき
- 汗をたくさんかいたあと、そのままにしていたとき
- 洗濯洗剤や柔軟剤を変えたあと
季節や天気とのつながりを感じる方は、記録をつけてみると傾向がつかみやすくなります。天気と体調の関係については気圧予報を体調管理に活かすでも触れています。
今日から試しやすいスキンケアと暮らしの工夫

ここからは、日常のなかで無理なく取り入れられる工夫をご紹介します。特定の商品をおすすめするものではありませんし、これをすればかならずよくなるという性質のものでもありません。合わないと感じたら、いつでもやめて構いません。
洗いすぎない
肌が気になるとき、つい念入りに洗いたくなりますが、必要な皮脂まで落としてしまうと、かえって乾きやすくなると言われています。ナイロンタオルでゴシゴシこするより、よく泡立てた洗浄料を手のひらでやさしくすべらせるほうが、肌への負担は少なくてすみます。すねやうでなど乾きやすい部分は、毎日せっけんで洗わなくてもよい、と説明されることもあります。
お湯の温度と入浴時間を見直す
熱いお湯は気持ちがよいのですが、肌のうるおいを奪いやすいとされています。ぬるめのお湯にして、長く浸かりすぎないようにするだけでも、上がったあとの突っ張り感が変わることがあります。お風呂上がりに体をふくときも、こすらずタオルで押さえるようにすると、肌への刺激が減ります。
保湿は「早く・広く」
入浴後は肌の水分が逃げやすい時間帯だと言われています。できれば体をふいてすぐ、顔だけでなく、すねやうで、せなかなど気になる部分にも保湿剤を広げてみてください。「顔は丁寧だけれど体は後回し」になりがちな方こそ、体のケアを足すと変化を感じやすいかもしれません。
使うものは、いま肌に合っているものであれば何でも構いません。新しいものを試すときは、いきなり顔に広く使うのではなく、目立たない部分で様子を見てからにすると安心です。
肌にふれるものを見直す
チクチクする素材が苦手になったなら、肌に直接ふれる一枚を、綿や柔らかい素材に替えてみる。洗濯のすすぎを一度増やしてみる。爪を短く整えておく。こうした小さな調整が、かゆみの引き金を減らしてくれることがあります。
部屋の乾燥をやわらげる
暖房やエアコンの効いた部屋では、空気が乾きやすくなります。加湿器がなくても、洗濯物を室内に干す、濡れたタオルをかけておくといった方法で湿度を保てます。エアコンの風が直接当たらない位置に座るだけでも違うことがあります。
かゆいときは、冷やす・さする
かきたくなったときは、そのまま爪を立てるのではなく、冷たいタオルを当てる、手のひらでやさしくおさえるといった方法に切り替えてみてください。かくと一時的に楽になっても、肌が傷ついてかゆみが強くなる循環に入りやすいためです。眠っているあいだに無意識にかいてしまう方は、薄い手袋をして休むという工夫をしている方もいます。
体の内側と眠りを整える
水分をこまめにとること、栄養のバランス、そして眠りの質。遠回りのようですが、肌はその人の生活全体をうつす場所でもあります。眠りに悩みがある方は更年期に眠れない不眠の原因とセルフケアを、生活習慣全体の整え方は更年期のセルフケア総まとめをあわせてご覧ください。
記録・見える化のすすめ

肌のゆらぎは、日によって波があります。「昨日は平気だったのに今日はかゆい」という日が続くと、何が原因なのか自分でもわからなくなってしまうものです。そこで力になるのが、日々の記録です。
難しく考える必要はありません。次のような項目を、気づいたときに残しておくだけで十分です。
- 肌の状態(カサつき、かゆみ、赤み、しみる感じなど)
- 気になった部位(顔、すね、せなか、うでなど)
- その日の体調(ほてり、汗、だるさ、眠りの深さ)
- 使った化粧品や、新しく試したもの
- 着ていた衣類の素材
- 気温・湿度・天気・気圧の変化
数週間分たまると、思いがけない共通点が見えてくることがあります。「乾いた日の翌日に強く出ている」「ほてりが多い週に重なっている」「あの服を着た日ばかりだ」。こうした気づきは、自分を責めるためのものではなく、暮らしを少し調整するための手がかりになります。
そして記録は、診察室でも役に立ちます。「いつごろから」「どのあたりが」「どんなときに強いか」を具体的に伝えられれば、医師も状況をつかみやすくなります。書き方のコツは更年期の症状記録のつけ方で、続けやすい形式は更年期の体調日記の書き方で紹介しています。
🌸 肌の調子と体調を、ひとつのカレンダーに|ゆらぎとわたし
カサついた日、かゆかった日をワンタップで残せます。SMIスコアや気圧予報とならべて表示できるので、「乾いた日の翌日に出やすい」「ほてりが多い週に重なる」といった自分だけの波が見えてきます。たまった記録は、受診のときにそのまま医師に見せられる1枚のサマリーに。記録・セルフチェック・気圧予報はすべて無料。
ほかの更年期症状との重なり
肌の変化だけが単独で起きているとは限りません。この時期には、ほてりや発汗、眠りの浅さ、気持ちの落ち込み、疲れやすさなど、いくつものゆらぎが同時に押し寄せることがあります。
たとえば、かゆみで夜中に目が覚めれば眠りが浅くなり、翌日のだるさにつながります。逆に、眠れない日が続けば肌の調子も落ちる。ひとつの不調が別の不調を呼ぶ形になりやすいのが、この時期の難しさです。
また、肌の見た目が変わることは、気持ちにも影響します。鏡を見るのが億劫になったり、人と会うのが気重になったり。それは大げさな反応ではなく、ごく自然なことです。ひとつの症状としてではなく全体の調子として眺めてみると、優先して整えたいところが見えてくるかもしれません。いまの状態を大まかに確かめたいときは、更年期のセルフチェック(SMI)を使ってみるのもひとつの方法です。
受診の目安と、何科に相談すればいい?

厚生労働省が2022年に公表した調査では、更年期に関係すると思われる症状を自覚していても医療機関を受診していない女性は、40代で81.7%、50代で78.9%にのぼると報告されています。また、厚生労働省のスマート・ライフ・プロジェクトによれば、中等度以上の症状があっても誰にも相談していない方が約7割いるとされています。多くの方が、ひとりで抱えたまま過ごしているということです。
肌のことは「病院に行くほどでは」と思われがちですが、生活のなかで困っているなら、それは相談してよい理由になります。とくに次のような場合は、早めに医療機関へ相談することをおすすめします。
- 市販の保湿剤を使っても、かゆみが続いて眠れない
- かきこわして、じくじくしたり出血したりしている
- 湿疹やぶつぶつ、水ぶくれなど、乾燥以外の変化がある
- 急に広い範囲に発疹が出た
- 顔が強く赤くなり、腫れをともなう
- 数週間ケアを続けても、まったく変化がない
- 気持ちの落ち込みが強く、日常生活に影響している
とくに、じくじくしている、急に広がった、腫れや発熱をともなうといった場合は、乾燥とは別の原因が隠れていることもあるため、早めに医療機関を受診してください。つらい症状が続く場合や、急に強い症状が出た場合も、我慢せずに相談することが大切です。
肌の症状が中心であれば、まず皮膚科が相談先になります。「更年期の影響かもしれない」と感じている場合は、そのことも伝えてみてください。あわせてほてりや眠りの悩み、気持ちの落ち込みなど全身のゆらぎがある場合は、婦人科で更年期全体の相談をするという選択肢もあります。どちらに行くべきか迷ったときは、更年期の不調は病院の何科?で相談先の選び方を整理していますので、参考にしてみてください。相談しやすい医療機関の探し方は更年期外来・専門医の選び方でも紹介しています。
初診の流れが不安な方は、婦人科の初診で何を聞かれる?で準備と持ち物をまとめています。
よくある質問(FAQ)
高い化粧品に替えたほうがいいのでしょうか?
価格と肌への合いやすさは、かならずしも比例しません。大切なのは、いまの自分の肌に合っているかどうかです。新しいものを次々に試すと、何が合って何が合わなかったのかがわからなくなってしまうこともあります。変えるときは一度にひとつずつ、記録をつけながら様子を見ると判断しやすくなります。特定の商品をおすすめすることはできませんので、迷うときは薬剤師や医師に相談してみてください。
サプリメントを飲めば肌の乾燥は変わりますか?
サプリメントや健康食品について、特定のものの効果を断定することはできません。栄養のバランスを整えることは体全体にとって大切ですが、サプリメントだけで肌の状態が決まるわけではないと考えられています。持病がある方や薬を飲んでいる方は、飲み合わせの面からも、医師や薬剤師に確認してから取り入れると安心です。
ホルモン補充療法(HRT)を受ければ、肌のゆらぎも変わりますか?
治療の効果や適応は、その方の状態や既往歴によって大きく異なるため、この記事で断定することはできません。更年期の治療にどのような選択肢があるかは医師と相談して決めるものですので、気になる場合は診察の場で直接たずねてみてください。HRTと漢方どっちがいい?では、選択肢の違いと考え方の視点を整理しています。
かゆみは、放っておけばそのうち治まりますか?
季節が変わって落ち着く方もいれば、続く方もいて、経過には個人差があります。ただ、かきこわしてしまうと肌の状態が悪くなり、かゆみが強くなる循環に入りやすいと言われています。「そのうち治まるだろう」と我慢して悪化させるより、早めに相談したほうが結果的に楽になることもあります。
まだ月経があるのですが、更年期と関係しているのでしょうか?
月経が続いていても、周期が乱れはじめる時期からゆらぎを感じる方はいます。年齢の目安は更年期はいつからいつまで?で整理していますので、あわせてご覧ください。月経の状況にかかわらず、気になる症状があるときは医療機関に相談して差し支えありません。
まとめ
更年期の時期に肌が乾きやすくなったり、かゆみが出やすくなったりするのは、女性ホルモンの変化や加齢、季節や生活の条件が重なって起こりうることだと考えられています。手入れが足りないからではありませんし、あなたの努力不足でもありません。
できることは、思っているよりもあります。洗いすぎないこと。お湯をぬるめにすること。入浴後すぐに、顔だけでなく体にも保湿を広げること。肌にふれるものを見直すこと。部屋の乾燥をやわらげること。そして、日々の記録をつけて自分の傾向をつかむこと。どれも小さな一歩ですが、続けるうちに「自分の肌はこういうときにゆらぎやすい」という感覚が育っていきます。
それでもかゆみで眠れない日が続くとき、かきこわしてしまったとき、乾燥では説明がつかない変化があるときは、迷わず皮膚科や婦人科に相談してください。肌のことで受診するのは、決して大げさなことではありません。
🌸 肌の記録を、今日から残してみませんか|ゆらぎとわたし
気になった日をワンタップで残していくと、数週間後には「どんなときにゆらぎやすいか」という自分だけの傾向が見えてきます。たまった記録は受診サマリーとしてまとめられるので、いつから、どのあたりが、どんなときにつらいのかを、そのまま医師に見せられる1枚になります。無料ではじめられます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療を目的とするものではありません。症状の感じ方や適した対応には個人差があります。症状が続く場合や気になる場合は、医療機関にご相談ください。
【参考情報源】厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査」(2022年)/厚生労働省 スマート・ライフ・プロジェクト

コメント