ドラッグストアの棚の前で、「更年期」と書かれた箱をなんとなく手に取ってみたことはありませんか。病院に行くほどではない気がするけれど、このだるさやほてりを少しでもやわらげたい。そんな気持ちで市販薬やサプリメントを探しはじめる方は、決して少なくありません。
けれど、いざ選ぼうとすると迷いますよね。似たような商品が並んでいて、どれが自分に合うのかわからない。ネットの口コミは絶賛と酷評が入りまじっている。値段もさまざまで、続けられるのかも見えない。結局そのまま棚に戻して帰ってきた、という声もよく聞きます。
この記事では、更年期の市販薬やサプリメントを「選ぶ前」に知っておきたい考え方を、できるだけ中立に整理します。特定の商品をおすすめすることはしません。かわりに、自分にとって必要かどうかを判断するための視点と、セルフケアで様子を見てよい範囲、そして受診に切り替えたほうがよいサインをお伝えします。読み終えたときに「まず何を確かめればいいか」がはっきりすることを目指しました。
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更年期に市販薬やサプリが気になるのはなぜでしょう

更年期は、閉経をはさんだ前後およそ10年間を指す時期とされています。この時期は女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が大きくゆらぎながら減っていくため、ほてり・発汗・不眠・イライラ・関節の痛みなど、さまざまな不調があらわれることがあります。どんな症状が出るかは人によって違い、時期によっても変わります。くわしくは更年期の症状一覧をまとめた記事もあわせてご覧ください。
それでも、多くの方が最初に医療機関ではなく市販薬やサプリに目を向けるのには、いくつか理由があります。
- 受診のハードルが高い/婦人科に行くこと自体に抵抗がある、平日に時間がとれない
- 「これくらいで病院は大げさ」と感じる/はっきりした病名がつくほどではない気がする
- すぐ手に入る/仕事帰りに立ち寄れる、通販でも買える
- 費用が読める/ひと箱いくらか、その場でわかる
実際、厚生労働省が2022年に公表した「更年期症状・障害に関する意識調査」の基本集計結果では、更年期症状を自覚しながらも医療機関を受診していない女性の割合が、40代で81.7%にのぼると報告されています。つまり、症状を感じている人の多くが、まずは自分でなんとかしようとしている状況があるということです。
この行動そのものは、決して間違いではありません。生活の工夫や市販の製品でやわらぐ不調もあります。大切なのは、「試すこと」と「様子を見続けること」を分けて考え、期限とふり返りの仕組みを持っておくことです。
市販薬とサプリメントは、そもそも何が違うのでしょう
同じ棚に並んでいても、市販薬(OTC医薬品)とサプリメント(健康食品)は、法律上まったく別のものとして扱われています。ここを知っておくと、パッケージの読み方が変わります。
市販薬(OTC医薬品)
医薬品医療機器等法(薬機法)にもとづいて承認された「医薬品」です。どんな症状に対して使うものか(効能・効果)が国の審査を経て決められており、パッケージや添付文書にその範囲が明記されています。用法・用量、使ってはいけない人、他の薬との飲み合わせなども記載されています。薬剤師や登録販売者に相談して購入できるのも特徴です。
サプリメント(健康食品)
法律上は「食品」に分類されます。そのため、病気を治すといった医薬品的な効能をうたうことはできません。「機能性表示食品」や「特定保健用食品(トクホ)」といった区分の製品では、届出や審査にもとづく一定の機能性の表示が認められていますが、これは医薬品の効能・効果とは意味あいが異なります。あくまで食生活を補うもの、という位置づけです。
つまり、市販薬は「決められた症状に対して、決められた量を、決められた期間使うもの」、サプリメントは「不足しがちな栄養を補うもの」と考えると整理しやすくなります。どちらが上ということではなく、目的が違うのです。
更年期向けとされる市販薬には、どんなタイプがあるのでしょう
ここでは商品名ではなく、大きな考え方の分類として整理します。実際に選ぶときは、必ずパッケージの効能・効果の欄と、薬剤師・登録販売者への相談を頼りにしてください。
漢方薬をもとにした製品
更年期の不調に対して薬局で見かけることが多いのが、漢方の処方をもとにした市販薬です。漢方では、同じ症状でも体格・体力・冷えの有無といった「証(しょう)」の違いによって合う処方が変わると考えられています。だからこそ、口コミで評判のよい処方が自分にも合うとはかぎりません。代表的な処方の考え方は更年期の漢方の選び方をまとめた記事でくわしく紹介しています。
複数の生薬やビタミンを組み合わせた女性向けの製品
生薬とビタミン類などを組み合わせ、女性特有の不調を対象として承認されている市販薬もあります。この場合も、対象となる症状はパッケージに書かれた範囲に限られます。書かれていない症状への効果を期待して使い続けるのは、目的からずれてしまいます。
個々の症状をやわらげることを目的とした薬
頭痛に対する鎮痛薬、寝つきの悪さに対する睡眠改善薬など、ひとつの症状に向けた市販薬もあります。これらは一時的な使用を想定しているものが多く、長く使い続ける場合は注意が必要とされています。とくに鎮痛薬は、飲む回数が増えていくと別の問題につながることがあると指摘されているため、「週に何回使ったか」を記録しておくと、自分の状態を客観的に見やすくなります。
なお、市販薬で対応できる範囲と、医療機関での治療の選択肢は別ものです。更年期の治療全体にどんな選択肢があるのかは、更年期の治療法をまとめた記事で整理していますので、比べるときの土台としてお読みいただけます。
サプリメントを考えるときの視点

更年期の文脈でよく話題になる成分について、どんな位置づけのものかを知っておくと、広告の言葉に振り回されにくくなります。
大豆イソフラボンとエクオール
大豆イソフラボンは大豆に含まれる成分で、体内で腸内細菌のはたらきによって「エクオール」という物質に変わることがあると報告されています。ただし、この変換ができる腸内細菌を持っているかどうかには個人差があり、日本人では持っていない人も一定の割合でいるとされています。そのため、同じものをとっても感じ方が人によって違う可能性がある、と説明されることが多い成分です。
また、大豆イソフラボンについては、食品安全委員会などが特定保健用食品などから上乗せしてとる場合の1日あたりの目安量の考え方を示しています。「体によさそうだから多いほどよい」と考えず、表示されている摂取目安量を守ることが基本になります。
カルシウム・ビタミンD
閉経の前後は、女性ホルモンの変化にともなって骨の量が減りやすくなる時期とされています。骨の健康を意識してカルシウムやビタミンDを気にかける方もいますが、これらはまず食事から考えるのが基本です。不足が心配なときに補うもの、という順番になります。
「たくさん飲めばよい」わけではありません
複数のサプリを併用すると、同じ成分が重複してしまうことがあります。とくにビタミンAやビタミンD、鉄などは、とりすぎによる影響が知られている成分です。数を増やすほど安心、という考え方は当てはまりません。
選ぶ前に確かめておきたい5つのこと

市販薬にもサプリにも共通して、買う前にチェックしておくと安心な項目があります。スマートフォンのメモに残しておくと、店頭で相談するときにも役立ちます。
1. いま飲んでいる薬や持病との関係
これがいちばん大切です。血圧の薬、血をさらさらにする薬、甲状腺の薬、精神科・心療内科のお薬などを飲んでいる場合、市販薬やサプリの成分との組み合わせに注意が必要なことがあります。乳がんや子宮体がんの既往、肝臓・腎臓の病気がある場合も同様です。お薬手帳を持って、薬剤師に確認してください。
2. 成分が重ならないか
すでに飲んでいるサプリや市販薬と成分が重複していないかを確かめます。とくに複合的な製品は、含まれる成分の種類が多いため気づきにくいことがあります。
3. 「いつまで試すか」を先に決める
市販薬には、使用の目安期間が添付文書に書かれているものがあります。サプリの場合も、あらかじめ「まず1か月」「次の生理まで」といった区切りを決めておくと、だらだら続けずにふり返ることができます。効いているのかどうかわからないまま半年たっていた、という事態を防げます。
4. 続けられる費用かどうか
1か月あたりいくらになるかを計算してみてください。数千円のものを複数続けると、医療機関での治療より負担が大きくなることもあります。費用は、選択肢を比べるうえで無視できない要素です。
5. 情報の出どころ
広告や個人の体験談ではなく、製品の添付文書、公的機関の情報、学会の情報を確認しましょう。日本女性医学学会、女性の健康とメノポーズ協会、厚生労働省のヘルスケアラボなどが、更年期に関する情報を公開しています。
セルフケアで様子を見てよい範囲と、切り替えを考えるサイン
市販薬やサプリで様子を見ること自体は、選択肢のひとつです。ただし「どこまでなら様子を見てよいか」の線引きを、あらかじめ持っておくと安心です。以下はあくまで一般的な目安であり、当てはまるかどうかは人によって異なります。
様子を見ながら続けやすい状態の例
- 不調はあるけれど、仕事や家事は普段どおりこなせている
- 症状が出る日と出ない日があり、休むと落ち着く
- 眠れない日はあるが、翌日に強く引きずることは少ない
医療機関への相談を考えたい状態の例
- 仕事を休む、家事が回らないなど、生活に支障が出ている
- 気分の落ち込みが続き、これまで楽しめていたことが楽しめない
- 市販薬やサプリを1〜2か月続けても変化が感じられない
- 不正出血がある、出血量が急に増えた、月経以外の時期に出血する
- 強い動悸や息苦しさ、締めつけられるような胸の痛みがある
- これまで経験したことのない激しい頭痛や、急なめまいがある
とくに、不正出血や強い胸の症状、突然の激しい頭痛などは、更年期以外の原因が背景にある可能性も考えられます。つらい症状が続く場合や、急に強い症状が出た場合は、自己判断で様子を見続けず、早めに医療機関にご相談ください。
記録があると、「効いているのか」の判断材料になります

市販薬やサプリを試すときに、いちばん難しいのが「効いているのかどうかの判断」です。更年期の不調はもともと日によって波があり、気圧や気温、睡眠、その日の予定にも左右されます。飲んだ翌日にラクだったとしても、それがサプリのおかげなのか、たまたまよく眠れたからなのかは、記憶だけでは区別がつきません。
そこで役に立つのが、日々の記録です。難しいことを書く必要はありません。
- 症状/その日つらかったものに印をつけるだけ
- 程度/強い・ふつう・軽い の3段階でも十分です
- 飲んだもの/市販薬やサプリを飲んだ日に印をつける
- そのほか/睡眠時間、天気、生理の有無
これを1か月続けると、「飲みはじめてから、つらい日が週4日から週2日に減った」「変わったのは睡眠のほうで、ほてりは変わっていない」といったことが見えてきます。感覚ではなく事実で判断できるようになると、続けるか、やめるか、受診に切り替えるかの決断がしやすくなります。
書き方の具体例は更年期の症状記録のつけ方をまとめた記事で紹介しています。あわせて、いまの状態を点数で確かめたい方はSMIによる更年期セルフチェックの記事もご覧ください。市販薬やサプリを始める前と1か月後で点数を比べると、変化がより見えやすくなります。
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市販薬やサプリを飲んだ日と、その日の症状をワンタップで記録できます。SMIスコアの推移と気圧予報を重ねて見ることで、「試したものによる変化なのか、天気による波なのか」を切り分けるヒントが得られます。受診するときは、そのまま医師に見せられるサマリーに変換できます。記録・セルフチェック・気圧予報はすべて無料。
受診に切り替えるとき、何科に相談すればよいでしょう
更年期の不調の相談先としては、婦人科や更年期外来がまず挙げられます。近くに更年期外来がない場合でも、一般の婦人科で相談できることが多いとされています。動悸や息切れが中心で心臓の病気が心配なとき、強い気分の落ち込みが続くときなど、症状によっては別の科が適していることもあります。どこに行けばよいか迷ったときは、更年期は何科を受診すればよいかをまとめた記事が参考になります。
受診したからといって、すぐに薬による治療が始まるわけではありません。問診や検査で状態を確認したうえで、生活の工夫だけで様子を見る場合もあります。治療を検討する場合の代表的な選択肢としては、ホルモン補充療法(HRT)や漢方があります。それぞれの特徴はホルモン補充療法(HRT)についてまとめた記事で解説しています。どちらが自分に向いているか迷うときは、医師に相談しながら考えていくことになります。
診察の場では、「いつから」「どんな症状が」「どのくらいの頻度で」「生活にどう影響しているか」を伝えられると話が進みやすくなります。ここでも、記録があると心強い味方になります。市販薬やサプリを試している場合は、その内容と期間もあわせて伝えてください。飲んでいるものを正しく共有することは、安全のうえでも大切です。
ひとりで抱えこまないという選択
更年期の不調は、外から見えにくいものです。「気のせい」「そういう年頃だから」と流されてしまい、話しても伝わらないと感じて、口をつぐんでしまう方も少なくありません。厚生労働省のスマート・ライフ・プロジェクトが実施した『女性の更年期に関する意識の実態』調査では、閉経後5年以上で中等度以上(SMI 51点以上)にあたる方のうち、およそ7割が周囲に相談したことがないと報告されています。
市販薬やサプリを探すという行動の裏には、「誰にも言わずに自分でどうにかしたい」という気持ちがあることも多いように思います。その気持ちは自然なものです。ただ、薬剤師に飲み合わせを確認する、家族に「今日はしんどい」と一言伝える、それだけでも状況は少し変わります。ひとりで判断しなくてよい場面は、思っているより多くあります。
ちなみに、更年期ケアに関わる市場は広がっており、矢野経済研究所の『フェムケア&フェムテック市場に関する調査』(2025年)によれば、2024年の更年期ケア市場は約280億円で二桁成長とされています。選べるものが増えるのはよいことですが、その分だけ情報も増えます。だからこそ、自分の体の記録という「自分だけの根拠」を持っておくことが、これまで以上に役立ちます。
よくある質問(FAQ)
市販薬とサプリメントは、一緒に使ってもよいのでしょうか
組み合わせによっては注意が必要な場合があります。成分が重なることや、飲んでいる薬との相互作用が考えられるためです。併用を考えるときは、購入前に薬剤師へ相談してください。その際、お薬手帳や、いま飲んでいるもののパッケージの写真を見せると話が早く進みます。
どのくらい続ければ、合っているかどうかわかりますか
製品や体質によって異なるため、一律の期間はお伝えできません。ただ、あらかじめ「まず1か月」といった区切りを決め、その間の症状を記録してふり返る方法は、多くの場面で役立ちます。決めた期間を過ぎても変化が感じられないときは、続けるかどうかを一度見直すきっかけになります。
サプリを飲めば、病院に行かなくても大丈夫でしょうか
サプリメントは食品であり、病気の診断や治療にかわるものではありません。生活に支障が出ているとき、不正出血があるとき、症状が急に強くなったときなどは、サプリの有無にかかわらず医療機関にご相談ください。受診したうえで、あわせてセルフケアを続けるという形も選べます。
市販薬で様子を見てから受診すると、遅いと言われませんか
市販薬やサプリを試したこと自体が問題になることは、基本的にありません。むしろ「何をどのくらいの期間試して、どうだったか」を伝えられると、医師にとって有用な情報になります。飲んだものの名前と期間を控えておくと安心です。
店頭では、誰に相談すればよいですか
薬局・ドラッグストアには薬剤師や登録販売者がいます。持病や飲んでいる薬がある場合は、薬剤師に相談できる時間帯を選ぶとより確実です。忙しそうに見えても、飲み合わせの確認は本来の業務ですので、遠慮なく声をかけて大丈夫です。
まとめ
更年期の市販薬やサプリメントは、「効くか効かないか」の二択で語られがちですが、実際にはもう少し手前に考えるべきことがあります。今日の内容を整理します。
- 市販薬は薬機法にもとづく医薬品、サプリメントは食品で、位置づけが異なります
- 選ぶ前に、持病・服用中の薬との関係を薬剤師に確認することがいちばん大切です
- 成分の重複、試す期間、1か月あたりの費用、情報の出どころを確かめましょう
- 生活に支障が出ている、不正出血がある、症状が急に強まったといった場合は、様子を見続けずに受診を検討してください
- 記録をつけると、「変化があったのか」を感覚ではなく事実で判断できるようになります
棚の前で迷う時間は、決してむだではありません。何を基準に選ぶかが決まっていれば、その迷いは「自分の体を大事にするための検討」に変わります。まずは、いまの状態を記録に残すところから始めてみてください。
🌸 まずは今日の体調を、ひとつ記録してみませんか|ゆらぎとわたし
今日から記録を残しておくと、数週間後には自分の不調の傾向が見えてきます。試しているものが合っているのかを判断する材料になり、受診するときには、そのまま医師に見せられる1枚のサマリーになります。棚の前で迷った時間を、次の一歩に変えていきましょう。無料ではじめられます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療を目的とするものではありません。特定の医薬品・サプリメントの効果を保証したり、使用をおすすめしたりするものではありません。症状が続く場合や気になる場合は、医療機関にご相談ください。市販薬やサプリメントの使用にあたっては、必ず製品の添付文書・表示を確認し、薬剤師または登録販売者にご相談ください。
【参考情報源】
・厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査」基本集計結果(2022年)
・厚生労働省 スマート・ライフ・プロジェクト『女性の更年期に関する意識の実態』調査
・矢野経済研究所『フェムケア&フェムテック市場に関する調査』(2025年)
・日本女性医学学会/公益社団法人 女性の健康とメノポーズ協会/厚生労働省 ヘルスケアラボ

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